彼らは云うだろう。「ネットワークが人間を堕落させ,戦争を起こさせ,そして世界の終わりを近づけた」,と。「だが」,と彼は云った。「それはもともとの人間の姿だっただけだ。ダメだったのであれば,それだけの存在でしかなかっただけだ」。
フランスの裁判所は20日,ヤフー社に対し,フランス国内のユーザーに対し,ナチス関連商品の販売を中止する対策を講じるよう命じた。ヤフーの弁護士は「解決できない本質的な問題」があるとしている。イーベイ社やアマゾン社では,いくつかの策を講じて,同様の問題を回避している。
いちおう,ヤフー・アメリカは合衆国の法律を準拠法としてるはずだが,無知な裁判官にそんなことを云ってもはじまらない(過去記事)。もし,ナチスの関連商品の売買が悪である,とするのであれば,いちばんに責められるべきは商品を購入したフランス国の人間である。国際法にその商品売買を禁じるものはない。各国に守るべき法があり,各地域に守るべき規則があり,各民族に守るべきルールがあり,各人が持つ規範もあろう。この世界は,そのすべてを尊重はするが,どれにも束縛を受ける必要はない。私は,そう考えている。
人間は,ネットワークという場で,試されて,いるのかもしれない。国家や民族というカテゴリーのない世界。違う主義の人間がすぐ隣にいて,違う宗教の人間がすぐ隣にいて,違う思想の人間がすぐ隣にいる。言葉を交わし,商品の売買をし,お互いの情報をどん欲に漁ることができる。いがみ合うことも,憎しみ合うこともあるかもしれない。国家も,法律も,宗教も,なにもよりどころがない,なににも束縛されるものがない世界で,人間同士は,うまくやれるのか,やれないのか。…私たちは,誰か,に,試されているのかもしれない。
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